こんにちは、あっきーです!
「考えるだけで嫌になる」「絶対したくない仕事」など思う方もいると思います。
著者の高橋幸宏(たかはしゆきひろ)さんは、7000人の子の命を救ってきた心臓外科(げか)医です。
子供や親御さんの切実な要求と日々向き合い、極度のプレッシャーの中で最高のパフォーマンスを発揮すべく、己を磨き、チームづくりをしている小児心臓手術の仕事は、ビジネスの世界にも通用する部分が多々あると述べています。
この本では、手術への準備やルーティンの重要性、良好なコミュニケーションづくりの核となるものなど、高橋さんの実体験に基づき、51個の流儀として述べられています。
今日はその中から厳選して重要な8個を解説していきます。ぜひ、ご自身の仕事に置き換えてご覧ください。
このブログが勉強になった、もっと詳しく知りたいと思った方はコメントください。
Contents
仕事の要は何かをまず理解する
この要を十分に把握(はあく)しておくことは、仕事の質の向上という面において、また仕事を存続させるという面で極めて重要です。
手技(しゅぎ)を極めることだけが要ではないということです。
つまり、全身への酸素供給を身体の外で管理しながら、その間に心臓を停止させて手術を行うわけです。
体外循環はあくまでも人の手で行うものです。 これだけを考えても、心臓手術は、全身臓器に大きな非生理的変動を起こす可能性があることが容易(ようい)に想像できるかと思います。その意味では、心臓手術は、全身を多少痛めつけながら心臓を治すというものかもしれないです。
このように、手術が原因で心臓以外の臓器に悪影響が及ぶことを手術侵襲(しゅじゅつしんしゅう)といいます。
これらの侵襲(しんしゅう)が発端(ほったん)となって、全身の浮腫(むくみ)や心臓・肺・腎臓・脳などの臓器機能不全が発生し、その結果、心臓は良好に治ったとしても心臓以外の臓器不全でを落とすこともあるわけです。
侵襲(しんしゅう)が大きければ、手術成績の良否(りょうひ)にかかわるだけではなく、影響を受けた各臓器を回復させるための術後治療がより長期にわたることになります。 術前状態の良い患者さんであっても、手術によって全身臓器の機能低下は多少なりとも発生します。
そのため、 もしも手術前に高度の心不全(しんふぜん)や呼吸不全(こきゅうふぜん)、腎機能低下(じんきのうていか)や肝機能低下(かんきのうていか)がある場合には、諸臓器機能(しょぞうききのう)に致命的なダメージを与えることもあります。
これが心臓手術は他の手術より侵襲が大きいといわれる理由です。当然、新生児や低体重児のように臓器機能が未熟な場合の侵襲はより大きくなります。さらに小児心疾患(しょうにしんしっかん)の一般的な特徴として、種類が多いことが挙げられます。
また、心臓以外の臓器の合併疾患(がっぺいしっかん)が多いのも特徴です。
▼要を十分に把握しておくことは、仕事の質の向上という面において、また仕事を存続させるという面で極めて重要
- 仕事には、どの職種においても要というものが存在する。 この要を十分に把握しておくことは、仕事の質の向上という面において、また仕事を存続させるという面で極めて重要。
- 手技を極めることだけが要ではないということ。
事前の戦略にこだわり過ぎない
それが成功率に関係しているといえます。
その1つは「時間短縮」です。いかに努力しても2,3時間の間心臓を止めて行わなければならない複雑な手術手技があります。このような長い手術では、当然、全身臓器のダメージや非生理的変動が強くなりますので患者の生死にかかわる可能性が高くなります。そのため外科医(げかい)は、今までの経験から独自につくり上げてきたポリシーと治療戦略 によって時間短縮に向けて努力をします。
特に小児(しょうに)心臓外科医は時間短縮に徹底的にこだわらなくてはいけないです。榊原(さかきばら)記念病院では、他の施設と比較して半分から3分の1ぐらいの時間で手術を行います。見学に来られた先生方はビックリするそうです。
短時間で手術を終わらせることは何よりも手術を受ける子どもたちのためです。小児(しょうに)心臓外科手術の低侵襲(ていしんしゅう)対策として、時間短縮は最も大事なことです。
ただ、ここで注意すべきことは、「事前に決めた戦略にこだわり過ぎない」ということです。
一つの戦略にこだわり過ぎると、望まない問題数パーセントの確率で必ず発生することになります。 逆に別の戦略に切り替えると、その数パーセントの問題は解決しますが、 新たな別の問題が数パーセントの確率で発生する可能性が出てきます。
つまり、自分のポリシーや戦略にあまりこだわっていると、望まない問題が発生した場合に対応できなくなるのです。
大事なのは、よくいえば「柔軟に」数パーセントの問題に対処することであり、悪くいえば「少しいい加減に」途中で出現した矛盾(むじゅん)に対して解決していくことです。
要は、手術の流れに沿うように要領よく流れをつくっていくことが求められます。
▼自分のポリシーや戦略にあまりこだわっていると、望まない問題が発生した場合に対応できなくなる
- 短時間で手術を終わらせることは何よりも手術を受ける子どもたちのため。リスク回避のために時間短縮は最も大事なこと。ただ、一つの戦略にこだわり過ぎると、望まない問題が数パーセントの確率で必ず発生することに。
- 逆に別の戦略に切り替えると、その数パーセントの問題は解決しますが、 新たな別の問題が数パーセントの確率で発生する可能性が出てくる。つまり、自分のポリシーや戦略にあまりこだわっていると、望まない問題が発生した場合に対応できなくなる。大事なのは「柔軟に」対処すること。
自分が楽になる「間(ま)」をつくる
まず、 時間感覚についてです。
時間短縮にはそれぞれの基本手技を確実かつ迅速に行える技量を身につける必要があります。基本手技がしっかりとできると、あとは同じ組み合わせを状況に合わせてやっていくだけなので、気持ち的にそれだけ楽にこなせます。
そのため、高橋さんは、基本的な手技を磨くことに対して、後輩をかなり厳しく指導しています。 基本的な手技を的確にこなすことによって、一定の時間感覚が身についていきます。
しかし、それ以上に大事なのは、心筋保護液注入(しんきんほごえきちゅうにゅう)の時間感覚です。 心筋保護液というのは、心臓を止めるために用いる薬剤です。 この心筋保護液の注入は約20分間隔で繰り返し行うので、注入する間は執刀医(しっとうい)の手だけでなく、手術の流れが止まります。
心筋保護液を注入する間の1〜2分は手術がストップしますが、この時間は次の手技について考える大事な準備時間となります。 20分間の手技の間は時間とのせめぎ合いで、極度の過緊張(かきんちょう)状態ですが、 この注入時間だけは一瞬ですが緊張がほぐれる瞬間です。
このような間(ま)はチーム医療にとって非常に大事です。
どんな仕事においても間を生かすことは大事だと思いますが、高橋さんたちの場合は、緊張した中で次の手技に移るための息継ぎをする感覚です。執刀医だけでなく、一緒に手術室に入っている看護師や体外循環技士(たいがんじゅんかんぎし)にもそんな間が必要です。
執刀医は、彼らに対して気を抜けるタイミングをつくってあげることも考えなければならないのです。ずっと気の抜けない手術をやっていると、手術室の中にカリカリした空気が生まれます。そういう状況で手術をやるのはいいことではないです。
だから、若い外科医にはそのような間をつくるという感覚も習得できるようしつこく指導しています。20分という間隔をいかに大事にするかです。 これはボクサーの3分の時間感覚と同じようなものかもしれないです。
高橋さんたちは、20分の中で停滞しない手技の流れをつくること、そして間をつくることによって、時間短縮という低侵襲性の獲得を目指しています。時間の短縮は、手術を科学的に分析して、時間を決めるというような話ではないです。基本は、20分でどうするかです。
▼時間の使い方を工夫すれば、もっと時間短縮できるのではないかという感覚で取り組むことが大事
- 大事なのは、緊張がほぐれる瞬間です。このような間はチーム医療にとって非常に大事。緊張した中で次の手技に移るための息継ぎをする感覚。ずっと気の抜けない手術をやっていると、手術室の中にカリカリした空気が生まれ、そういう状況で手術をやるのはいいことではない。
- だから、間をつくることによって、時間短縮というリスク回避を目指す。時間の使い方を工夫すれば、もっと時間短縮できるのではないかという感覚で取り組むことが大事。
手術全体の流れを通して見る
そこで求められるのは、お互いの手を邪魔しない皮膚感覚です。特に執刀医の多くはわがままなので、自分のテリトリーに他のスタッフが入ってくることを好まないです。
手術がスムーズに流れることは、当然、時間短縮に繋がります。流れのよい手術では、お互いに自然と気を配って手がぶつからないように、邪魔にならないように、手術の流れをつくっています。
このような皮膚感覚を身につけるために必要なのは、手術全体の流れを通して見ることに尽きます。
高橋さんも、執刀医として手元に意識を向けることは当然ですが、周囲にも常に気持ちを張り巡らせていると述べられています。 看護師が器械を出すタイミングはどうか、技士が行う体外循環の管理はうまくいっているのか、麻酔医は循環動態に反応して動いているのかというようにです。
これらの流れがうまくいっていない時にはずいぶんと厳しいことも言ったそうです。しかし、執刀医はそうやって手術の流れをよくして、時間を少しでも縮めることが手術の質の向上につながること、特に術後の回復が早くなることをチーム各員に具体的に示さなくてはならないのです。
皮膚感覚を自分のモノにするには、なるべく多く手術室にいることです。これが一番手っ取り早い方法です。
だから高橋さんは、若手外科医に対して、できる限り手術室にいるようにと指導しています。 皮膚感覚を獲得すると、外科医は完璧なる平和主義者になります。
人と争うことが嫌になるのです。争うことが自分の精神状態だけでなく、患者のデメリットになることを知るからです。
▼皮膚感覚を身につけるために必要なのは、手術全体の流れを通して見ることに尽きる
- 低体重児の手術では、小さい心臓の周辺で外科医の大きな手が交錯することになる。そこで求められるのは、お互いの手を邪魔しない皮膚感覚。手術がスムーズに流れることは、当然、時間短縮に繋がる。
- このような皮膚感覚を身につけるために必要なのは、手術全体の流れを通して見ることに尽きる。手術の流れをよくして、時間を少しでも縮めることが手術の質の向上につながること、特に術後の回復が早くなることをチーム各員に具体的に示さなくてはならない。皮膚感覚を自分のモノにするには、なるべく多く手術室にいること。これが一番手っ取り早い方法。
直前情報は自分で現場に聞く
高橋さんは、最初の頃は、手術の前に一種のゲン担ぎとして自分で決めたルーティンを必ずやっていたそうです。しかし、ずっとやっていると、そのうちバカバカしくなり、現在はあまり考えないと述べられています。
ただ、今でもルーティンというべきことは必ず行っているとも述べています。
手術前には、子どもたちのいろんなデータを見ながら会議を行い、手術の方針を詳細に決めます。しかし、容体は刻々と変化していきますので、手技のいくつかを変更する必要性も出てきます。
大事なことは手術直前に確認することです。
高橋さんの場合、手術前日の夕方か当日の朝に担当の小児科の若い先生に必ず電話をするようにしています。自分から電話をかけて、確認してから手術に臨みます。要するに、なるべく手術の開始に近いところでもう一度判断を行うわけです。
会議で決めたことに固執していると手術中の変化に対処できない可能性が出てきます。だから、自分の部下に「小児科の先生に聞いておいて」と指示を出すのではなく、必ず自分から聞きに行って状態を把握するようにしています。
▼会議で決めたことに固執していると手術中の変化に対処できない可能性が出てくる
- 手術前には、子どもたちのいろんなデータを見ながら会議を行い、手術の方針を詳細に決める。しかし、容体は刻々と変化していきますので、手技のいくつかを変更する必要性も出てくる。 大事なことは手術直前に確認すること。
- 会議で決めたことに固執していると手術中の変化に対処できない可能性が出てくる。だから必ず自分から聞きに行って状態を把握するようにしている。これはコミュニケーションを円滑にするためにも大事な行動。
ブレない心をつくる
できないものはできないです。
そこで諦めるか、あるいは、もっとうまくなる努力をするか、それだけしかないです。
下手は下手、上手は上手、下手な奴は上手になるように努力するだけです。それ以外のことを手術に求めることは余計なことです。そこをしっかり押さえておけば、何があってもブレることはないです。
もう一つ大事なことは、医者としての使命を忘れないことです。
この使命を高橋さんは「根っこ」と呼んでいますが、この根っこは医者を続けているうちにだんだん失われていくことがあります。 どんな職業も同じかもしれませんが、当初の「こうなりたい」という目標が時間とともに変わってしまうわけです。
しかし、楽に達成できる目標なんて意味がないです。
目標達成に苦労が伴うのは当然です。 「医者になって命を救うんだ」と決めた時点から苦労は覚悟しなければならないです。その時点で「何があってもブレない」という根っこができあがっていなければいけないです。
そういう自覚がないからブレてしまいます。今の若手を見ていると、根っこが育っていないためにブレまくっているという印象を抱くそうです。根っこがしっかりしていないと、人は簡単な方に流れやすくなります。
そのため、「これが正解だ」と思ってやったとしても間違いが多くなりがちです。そのあたりのブレを修正してあげるのが、経験を積んだ上司の役割です。
年寄りが若手と一緒に働く理由はそこにあります。ブレた時に元に戻してあげる、それがベテランというものです。根っこが育っていない若手には、上司がしっかり教えてあげないといけないです。
それがブレない心をつくることになります。
▼目標達成に苦労が伴うのは当然。 「医者になって命を救うんだ」と決めた時点から苦労は覚悟しなければならない
- ブレないために大切なのは、自分が下手なら下手と認め、うまくなるしかないと考えること。 それ以外のことを手術に求めることは余計なこと。そこをしっかり押さえておけば、何があってもブレることはない。
- もう一つ大事なことは、使命を忘れないこと。目標達成に苦労が伴うのは当然。 「医者になって命を救うんだ」と決めた時点から苦労は覚悟しなければならない。覚悟がないからブレて、簡単な方に流れやすくなる。そのため、「これが正解だ」と思ってやったとしても間違いが多くなりがち。 そのあたりのブレを修正してあげるのが、経験を積んだ上司の役割。根っこが育っていない若手には、上司がしっかり教えてあげないといけない。 それがブレない心をつくることに。
仕事は愉(たの)しく」という覚悟で臨む
ただ、そう皆さんが考えられているとすれば、誠に失礼な言い方ですが、そのような手術に対して夢中になっていることは、ある意味、愉快なことです。
愉しく仕事しているから変な緊張感もなく手術が滞(とどこお)りなく進み、結果的に時間短縮を可能にしています。
また、愉しい(たのしい)からこそ、より多くの手術ができます。だから、仕事は愉しくしなくてはいけないです。そのような思いは命を扱うからこそむしろ大事です。
もう一つの覚悟は、一旦手術室に入ったら、嫌になってもやらなくてはいけないということです。そういう覚悟で臨んでいると、これは自分が生きるための基本だと感じるようになります。そうすればブレることはなくなります。
最初の2、3年ぐらいの間に若手の医者にそういう覚悟を感じてもらうことが、高橋さんの目標でもあります。医師には、ブレなさとか根っこみたいなものをどこかでつくり上げなくてはいけないです。それはこれからの病院の大きな役割になります。
▼手術に対して夢中になっていることは、ある意味愉快なこと
- 手術に対して夢中になっていることは、ある意味愉快なこと。愉しく仕事しているから変な緊張感もなく手術が滞り(とどこおり)なく進み、結果的に時間短縮を可能に。 また、愉しい(たのしい)からこそ、より多くの手術ができる。だから、仕事は愉しく(たのしく)しなくてはいけない。そのような思いは命を扱うからこそむしろ大事。
- もう一つの覚悟は、一旦手術室に入ったら、嫌になってもやらなくてはいけないということ。そういう覚悟で臨んでいると、これは自分が生きるための基本だと感じるようになる。そうすればブレることはなくなる。
数をこなす
だから、こちらも特別な気分になります。それが礼儀です。ただし、「今からやるぞ」といった戦闘態勢に入るという気分ではないです。 手を洗て、ガウンを着て、患者さんを消毒した時点で、緊張感は既になくなっているそうです。
しかし、当然若い頃はめちゃくちゃ緊張したそうですが、結局、緊張しない秘訣は、「数をこなす」 ぐらいしかないことがわかったそうです。数をこなしていると、緊張していることがバカバカしくなってきます。 かなりの手術件数をこなした頃、手術が終わったあとに「どうしてあの時は手が震えるぐらい緊張したんだろう」と思うことがあったそうです。
もちろん、良い意味での緊張感は必要なことですし、手術がうまくいくことが条件なのですが、そう思った時から緊張することがなくなったそうです。 余分な緊張をしなくなった分、実際に手術時間が短縮され、結果として、より多くの手術をこなすことができるようになりました。
どんな仕事でもそうですが、自分自身をうまくコントロールできるようになると、ワンランク上の仕事ができるようになります。
高橋さんも、「緊張するくらいなら他の勉強に力を注いだほうがいい」という考え方の転換ができたことによって、手術手技のレベルが上がったと述べています。
▼自分自身をうまくコントロールできるようになると、ワンランク上の仕事ができるようになる
- 数をこなしていると、緊張していることがバカバカしくなってくる。もちろん、良い意味での緊張感は必要なことですし、手術がうまくいくことが条件。
- しかし、余分な緊張をしなくなった分、実際に手術時間が短縮され、結果として、より多くの手術をこなすことができるようになった。どんな仕事でもそうですが自分自身をうまくコントロールできるようになると、ワンランク上の仕事ができるようになる。
まとめ
高橋幸宏(たかはしゆきひろ)】
- 仕事の要(かなめ)は何かをまず理解する
- 事前の戦略にこだわり過ぎない
- 自分が楽になる「間」をつくる
- 手術全体の流れを通して見る
- 直前情報は自分で現場に聞く
- ブレない心をつくる
- 「仕事は愉しく(たのしく)」という覚悟で臨む
- 数をこなす
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